英国獣医師免許を取得しようとした背景①

いつもモヤモヤした気持ちを感じてきた10年

小動物外科を生業とする自分は、この10年以上モヤモヤした気持ちが続いていた。

それは、私が日本獣医麻酔外科学会の認定する「小動物外科専門医」ではないからだ。

獣医の世界では、人医療のようにまず専科として研修して専門医の資格を取って臨床にあたるということが慣例としてない。だから、「専ら私は外科を生業としています」という「自称」外科医が業界に氾濫している。私もその一人だ。

じゃあ、専門医のレジデントを開始すればいいじゃないかという話になるのだが、そう簡単ではない。簡単ではないのが、学問・技術として簡単でないのなら良いのだが、レジデントを開始するという環境を手に入れるのが簡単ではない。このレジデント制度ができたのは今から10数年前だったと記憶している。この頃は大学の外科研究室に所属して専科研修医になっていないとレジデントコースに実質乗れない状態だった。

もちろん自分は既に一般臨床に出てそれなり経過しており、生活の維持なども考えると、ほぼ無給の専科研修医になってレジデントコースに参加するなんて現実的ではないことだった。

現在では、外科専門医が所属する施設でレジデントコースを開設しているところで研修することでも取得することができるが、それでもその施設は多くなく、やはりコースに乗ることは非常に難しい。

そういうことで、現在、外科専門医の希少性は非常に高く、現在のところ17人しかいない。しかもそのうちの何人かはアメリカの小動物外科専門医を取得しており、書き換えのような手順で取得している者もいるため、実際にはもっと少ない。

つまり何が言いたいのかというと、「外科専門医」の資格が欲しいのだ。じゃあ、なぜ欲しいのか。それは自らの自信の無さからきている。私は外科医としてはそれなりに技術も知識もあると自負している。手術件数、内容ともに周囲を見渡して判断するに「外科を生業にしてますね」というある種の基準を超えていると思う。しかし、誰がそれを認めてくれるのか。業界内で公に認められたいのである。自分がやってきた外科が間違っていないという承認が欲しい。そして、自信を持ちたい。でも、現在の生活水準を著しく落として家族に大きな負担をかけてまでレジデントに参加はできない。

承認欲求モンスター誕生

そうしたなかで、少しでも「公に認められたい」という承認欲求から現実的に取得可能な外科系認定を取得し漁ってきた。例えば、日本動物病院協会(JAHA)の外科認定を取得した。また、イギリス発祥のESVPS(現在はISVPS)の認定するGPCert(Small Animal Surgery)という外科系認定を取得した。

どちらも取得するにはそれなりの苦労があるが、取得するための研修や勉強に対する苦労を惜しんだことはない。

業界を知らない人から見れば「それだけ持ってれば十分じゃないのか」という話が出るかもしれない。しかし、業界内の人間から見ればわかると思うが、日本国内では日本獣医麻酔外科学会が認定する外科専門医が至上なのであって、それ以外は大分価値が劣る。私の承認欲求を満たせないのである。

そういう背景から、とにかく外科医としての承認欲求を満たすために、取得可能な外科系資格はどんどん取得する方向で動いていた。現在もISVPSが認定するGPAdvCert(Small Animal Soft Tissue Surgery)という資格を取得するため、コースに参加している。

次回に続く

コメント

タイトルとURLをコピーしました